(アンソロでは縦書き3段組となっております) 地下王国建設強制労働施設 カイジ『沼』攻略失敗より数ヶ月後 土曜日深夜、黒服に呼び出され、あかりは懐中電灯一つの暗い食堂に通された45組は、なぜかビールを振舞われていた…しかも見たことのない銘柄を大量に。 なにかの罠かと思うが、タダ酒…倹約生活もリーダー格のカイジがいたから乗り切れたようなグループである。ひとりが口をつければ、崩れるのはあっけなかった。 「でも、なんで俺たちだけ、ビール飲んじゃっていいんだろうな?」 「カイジさんが失敗しちまったから、その『残念会』ってことじゃないのか?…あんまりおおっぴらに出来ないから、今頃で」 「じゃぁ、これはカイジさんの差し入れ?」 「さあなぁ…あのあと、どうしたんだろうなぁ…カイジさん」 「なんでも、ここよりもひどいところに堕とされたらしいぜ?俺らは返済が終わるまで生き延びれば、いずれ地上に戻れるかもしれないけど、カイジさんは…」 やがて三好がグズグズ泣き始め、全体的に重い空気になり…それを紛らわすために、ビールの空き缶がガンガン増えてゆく。 さて…キンキンに冷えた飲み物をハイペースで飲めば、生理的欲求は必至。 一人が「ションベン」と言えば、俺も俺もと、まるで女子高生のごとく、なかよしこよしで連れションに…というところで、黒服から待ったがかかった。 「お前らに用を足してもらうのは、いつものトイレではない」 暗闇で黒服がニヤリとしたが、それに気づかぬ酔っ払い5名…黒服に誘導されるまま、千鳥足で某所へ… その30分程前・・・ 数ヶ月前、強制労働施設よりさらに下層…男だらけの売春窟に堕とされたカイジは、黒服に連れられて、かつて自分が働いていた強制労働施設のシャワールームにいた。 沼攻略失敗と同時に、カイジと共に堕とされ、現在カイジの ここに一緒に放り込まれて、カイジに体を売るよう計ったのが遠藤なら、カイジの体を最初に開き、男の体に慣らしたのも遠藤。 恋心を抱えながら、自分を欺いて女衒の真似事をしているのである・・・・・・かつて、やはり人でなしと呼ばれるような金貸しであった遠藤ではあるが、人である以上、自分の感情を持て余すことがあっても、無理のないことであろう。 黒服が連れに来て、カイジはしぶしぶ立ち上がる。 「行ってくる」 「ああ・・・」 自分の表情を見せたくないのか…仕事前、カイジが最後に見る遠藤の姿はいつも背中。 そのたびにいつも、置き去りにされるような寂しさにかられるが、仕事内容を思えば、自分としても仕事前に顔を合わせるのも確かに気まずく・・・何度仕事の回数を重ねても、カイジはそのことに馴れなかった。 でも今日くらい、ちゃんと顔見て出てきたかったな・・・ カイジもなにか嫌な胸騒ぎがしていて、そんなことを思い、脱衣所でぼんやり突っ立っていると、黒服に声をかけられる。 「服を脱げ」 そういうお仕事なのだから仕方がない・・・が、かつて仲間と共に使用していた施設であんなことをするのかと思うと、もともとやむを得ずやらざるを得なくなった仕事が、ますます気の進まないものになり、服を脱ぐのものたのたとした動作になる。 見方によっては、恥じらいつつ衣類を脱いでいるようなその様は、そこいらのストリップより、実は妙に色っぽかったりするのだが、カイジ本人だけがそれに気づいていない・・・ 黒服に言われるまま、そのまま長い洗い場兼通路をぺたぺたと歩いてゆき、天井からシャワーがずらりと並んだ通路に足を踏み込んだところで、ストップがかけられる。 不意に斜め後ろから蛇のような視線を感じ、ギクリとしてそちらを振り向けば、洗い場とシャワー室の間を仕切る目印のような、申し訳程度の壁のあたりに隠れるように、男が一人、立っていた。 その男・・・髪は長めで茶髪の外ハネ。室内なのに趣味の悪いサングラスをかけ、服装はチンピラのよう(実は高級ブランド品だが、組み合わせセンスと男からにじみ出ている剣呑な雰囲気から、カイジの目にはそう映る)。身長はカイジよりやや高く、今まで取った外部の客の中で一番若い・・・おそらくカイジより若い。 「クククッ…」 カイジの怯えるような様が面白いのか、その男は咽喉を鳴らして笑った。 |