きんだん。   (一応ふたなり注意です)


 リンゴーンリンゴーンと鐘が鳴り、白い鳩が群れ飛ぶ気配を背中で聞く。
 傍らには愛する人…
 幸せの絶頂にあるべき花嫁の表情は……なぜか冴えない。
 どうしてこんなことになっているんだっけ?
 そんな考えが脳内をぐるぐるしているが、深く考えようとすると、頭の中にもやがかかる。
 チャペルの重い扉が、ギィー…っと鈍く軋んで閉じた。
 内装はウエディングドレスにも負けない純白だが、背後からの日の光が遮断されると、やけに暗い印象となる。
 チャペル内に参列者はいない…それも寒々しさを与える一因である。
 パイプオルガンはないのに、その音がどこからともなく虚しく曲を奏でる中、祝う者が誰一人いないことに、今はホッとするカイジである。
 体調が優れないのか、急にガクリと崩れ落ちそうになるカイジを支えるのは、遠藤…
 母子家庭なので、花嫁の手をとり、バージンロードを歩く父はいない。
 年齢的には父親代わりの介添えかと思われそうだが、着ているものは白のモーニング…れっきとした花婿である。
 赤いバージンロードを、白い衣装の新郎新婦が並んでゆっくりと進む…
 今のカイジにとっては、神父の待つ祭壇までが、無限地獄のように長かった。
 早くたどり着いて、このような茶番はとっとと終わらせてしまいたい心情とは裏腹に、必要以上にそろりそろりと歩く必要が、花嫁にはあった。
 ヴェールの下、潤んだ瞳…紅潮する頬…小刻みに震えている体…ドレスのデザインとのバランスを取るため、胸にはごっついパットが入っているが、それが微かに震えている様子さえ、知らぬものには、これから祝福受ける歓びと緊張によるものだと思うだろう。
   
 花嫁と花婿がようやく神の前にたどり着き、式が始まる。
 お定まりのありがたい説教が、やけに長い。
 立っているのがやっとで、ヴェールに隠れているが、額からは嫌な汗が吹き出している。
 隣では遠藤が、永遠の愛を宣誓しているが、カイジは
 もう絶対、永遠の愛なんか誓ってやらないっ!!
 などと、心の中で毒づいている。
 「花嫁は沈黙をもって応えよ」
 自分の番で、いきなり思っていたセリフと違い、いささかうろたえるカイジだが、要はヤダといえばいいのだと、口を開きかけ…
 だが、自分の体に起こっている変化が…いや、正確には己が羞恥心が、それを許さなかった。
 沈黙でなければいいのならば、どんな声を上げようが、口を開けばいいのである。
 だが、こんな場所ではごめんだ…少し開けばたちまち喘ぎが漏れてしまいそうで、カイジは必死で口をつぐんだ。
 「では、誓いのくちづけを…」
 遠藤はカイジを自分の方に向かせると、このときばかりは神妙な面持ちで、花嫁のヴェールを上げ、唇を寄せる。
  やっ…この、バカ遠藤っ!!
 誓いのキスで舌まで入れるヤツがいるかと、体を引き剥がして、横っ面を思いっきり張り倒したいカイジであったが、強い力で抱きすくめられ、抵抗することも叶わない。
 やがて重ねあう唇同士から、水音が漏れ始め…カイジの手にしたカサブランカのブーケが、ぱさりと床に落ちる頃、神父役はやれやれと肩をすくめて、出て行ってしまった。
 ちょっ…!神の御前で、あからさまにふしだらな行為が行われているんだから、注意しろっ!!つーか、俺を一人にしないでくれぇ〜っ…
 カイジの心の叫びに気付いているのは遠藤くらいのものだが、それでやめてやる男ではない。
 ふたりっきりになったのをいいことに、よっこいせと、カイジをお姫様だっこで抱えると、あろうことか、祭壇の上に寝かせた。
 「バカっ!!なに考えてるんだよっ!!」
 「赤い絨毯の上でもまぁいいんだがな、花嫁さんを床の上にってのも悪いだろう?」
 などと遠藤は、純白のドレスの裾をめくり上げようとする。
 床だろうが祭壇だろうが、ここはチャペルである。
 八百万の神々がおわしすぎて宗教に寛容すぎる日本人らしく、特にこれと信じている特定の神はいないカイジであるが…
 「やだっ…神様が…」
 遠藤はムッとして、もう一度、無理矢理カイジのくちびるを奪った。そのついでに、実際には肉の詰まっていない、柔らかな胸をドレスの上から押し付けるように掴む。
 女ではないのだから、そんなことをされても痛みなどを感じるはずのないカイジの眉が、ギュッと寄った。
 「お前は俺だけを信じてればいいんだ。…大体、お前だって、ローター仕込んだまんま、そんな恰好してきたじゃねぇか」
 クククッ…っと笑われて、カイジの顔は真っ赤になる。
 どうしてこんなことになったのか、いまだはっきりわからないが、こんなあらゆる意味で恥ずかしい恰好をするためには、いやいやだろうが、それでも自分から協力しなければならない…
 「しっかし、今の詰め物はすげえよな。触り心地は本物と大してかわらん…お前も触ってみろ?」
 カイジの放り出されている右手を掴むと、ローター入りパットの胸に持っていき、その上に乗せる。
 敏感な部分をくすぐり続けている振動がいくぶん強く伝わり、そこからじわじわとこみ上げてくる感覚と、手から伝わるぷにぷにした触感は確かに心地いいのだが…花嫁カイジは複雑である。
 本物と変わらないっつっても、俺、本物知らないし…それにこのボリュームは遠藤の趣味なんだよな?
 推定Dカップの程よい巨乳…自分にはついていないのだから、自分に飽きたらすぐ浮気に走るかも…
 嫌な考えが頭をよぎり、勢いでニセ乳をギュッと握ってしまうと、またブルブルがひどくなり…カイジは「ああ…っ」と、悩ましい吐息を漏らす。
 「気持ち、いいのか?…まぁそうしてろ。すぐにもっと良くしてやるから」
 「ヤダッ!!さっきの神父さんが戻ってきたらどうするんだよっ!?…それに次の組だって…」
 「心配するな。今日は貸切だ。なにせ、新婚旅行はギャンブルの名所しかピックアップしないような嫁をもらっちまったから、せっかくの旅行はお前がもう少し落ち着くまでおあずけ…代わりにこっちで張り込んだからな…神様の前で何時間でも可愛がってやるよ」
 「この、バカ遠藤っ」
 ウェディングドレスを捲り上げ体制に入ってる遠藤の広い額を、ビタンと叩くが、遠藤はこれに動じず、ニヤリと笑ってみせる。
 「なんだかんだ言いながら、言いつけどおり下着はガーターベルトとストッキングだけ…可愛い嫁さんをもらって、俺は幸せもんだなぁ?おい」
 もう恥ずかしさいっぱいで涙ぐむカイジの、後ろに刺さっているオモチャの振動を強くしてやる。
 「やっ…いやぁ〜…」
 「長い長いバージンロードで、コレを落とさないようにしっかり締め付けて歩いてきたんだから、えらいえらい。イクのまで我慢してるのはつらかったろ?ん?」
 身悶える花嫁の、むき出しで震える可憐なピンク色のそそり立つそれを、ごつい指で可愛がりつつ、実際は婚前で何度もしているが、とりあえず公には『初めての共同作業』を行おうと、準備をしようとする遠藤だったが、「ん?」と、あることに気がついて、目を瞠った。
 「カイジ…俺、ちょっと神様とやらを信じてやってもいいわ」
 「…えっ?」
 何のことだかわからない…そんなカイジの反応に、遠藤はいたずらっぽく微笑み、スカートの海に顔をうずめる。
 「えっ…なに…なん……」
 昨日まで遠藤を受け入れていた下の口には、現在、震える太い無機物が蠢いてカイジを弄っている。なのに、そことは少し上にずれた部分で、でも確かに、遠藤の舌が自分の内部に浅くだが侵入している感触。
 「やだ、ヘんだへん…あ…」
 後ろも、カイジの男性自身も遠藤にいじられ、それだけでどうにかなってしまいそうなのに、新たに湧き上がる未知の感覚…遠藤の愛撫に呼応して、その場所から何かがとろりとあふれてくるのを感じ、カイジは不安と愉悦に、自分の体を強く抱きしめる。
 「…もしかしたらお前には祝福じゃなくて、試練かも知れないが…まぁ、ふたなりってヤツだな」
 「ふたなりって…両方あるあれか?」
 「良く知ってるじゃねぇか」
 健康な青年の夜のオカズに使うようなマンガでお目にかかったことのある設定を思い出し、カイジの体から快楽の波が引いてゆく…
 「嫌だ…やだ、そんなの…」
 そんなヘンな体になったら、新婚早々、捨てられてしまうかもしれない。
 さっきまで腹立ち紛れに、絶対認めないと思っていたのに、捨てられてしまうと思うとなにやら悲しみが止め処もなくあふれてきて、花嫁は顔を覆って泣き出してしまう。
 確かに急にそんなことになったら、動揺するのも当たり前かと、遠藤は一つ溜め息をつき…泣きじゃくる花嫁の髪を優しくなでる。
 「生まれてから二十数年、ずっと男で教育うけてたんだから、しかたねぇが…それでも俺が嬉しいんだって言ったら、お前、どうする?」
 いまだえぐえぐと泣きまくりのカイジだが、それでも指の隙間から、遠藤の様子をそっと窺う。
 ひどく優しい目をしているが…実は縁切りの前兆だったらどうしよう?
 不安でたちまちまた、涙がこみ上げてくる。
 「なぁ…ホントに、一生大事にするから…泣くな」
 カイジのおでこにキスをして、優しく言葉をかける遠藤だが、カイジの泣きの発作はおさまらない。
 困ったように頭をがりがり掻いた遠藤だったが、何を思ったのか、再びカイジの足の付け根に顔をうずめると、もう一度、カイジの新しい入り口に口をつける。
 「ばかっ!やだったらっ」
 「やじゃねぇだろっ!!お前は実力行使で体にわからせた方が早い」
 既に潤いまくりなことを確認して、遠藤はベルトをカチャカチャ言わせながら、白いスラックスから黒々とたくましい欲望を露出させる。
 必死で足を閉じようとするカイジの抵抗を無理矢理抑え込み、大きく割った足を自分の元に引き寄せた。
 「とりあえず、天国に連れてってやる。他のことは後で考えりゃあいい」
 後ろでは相変わらず無機物が動きまわる中、遠藤はカイジの初めての部分にゆっくりと押し入ってゆく。
 処女膜がブツンと裂けると、カイジの顔が苦痛に歪んだ。ただでさえ、狭い隧道が別の道にはまっているプラグによって、更に圧迫されているのである。痛くないはずがない。
 いつもならこの手の苦痛は、ベッドのシーツを握り締めて耐えるが、今はそれもないので、ドレスのスカートを掴み、ぐっと痛みをこらえる。
 だが、遠藤はやめてやるつもりはない。
 これまでの入り口と、カイジの男性自身、そして新たに出来た女の部分…それらのすべてをカイジに感じさせてしまいたいらしかった。
 遠藤のすべてが納まったところで、遠藤は感慨深げに、その結合部を指でなぞる。
 細い血の筋が、白いドレスを微かに赤く染めていた。
 「こんなことで、お前のすべてが手に入るなんて、思っちゃいねぇがな…」
 そんな遠藤の小さな呟きは、カイジの耳に届かなかった。
 引き裂かれるような痛みのなか、こんな体でも望まれているという歓びは、体の感覚に火を灯すが、でも自分は男なのに…という自我が、カイジの心と体をバラバラにしている。
 ただ、それでも遠藤が、初めて結ばれたときのようにカイジを気遣って、乱暴にではなく小刻みにゆすってくれるのはうれしかった。
 「遠藤さん…」
 遠藤の顔が見たくなって、つながったまま、必死で上体を起こす。
 どうしたいのかわかった遠藤は、押さえつけていた足から手を離して、カイジの腰を抱いた。
 欲望が切羽詰っている反面、カイジが心配でたまらないというのが遠藤の表情から見て取れて、カイジはもう、どうだっていいや…と思ってしまう。
 すべては後回しにして、今はこの人だけが欲しい。
 祭壇に腰掛けたまま、白いガーターベルトとストッキングの足を遠藤のそれに絡め、腕は遠藤の首にかじりつく。
 「…カイジっ」
 恥ずかしくてマトモに顔を見られない、ついでに言いたいけど恥ずかしくって言えない言葉のあれやこれやをごまかしたくて、何か言いかける遠藤のくちびるを自分のそれでふさいでしまう。
 二つの入り口を遠藤にふさがれた状態で舌まで絡めあうキスまでしていると、本当に今、自分はこの人に征服されているのだなぁ…と思う。
 他の人間には絶対そんなこと許さない。でも遠藤なら…
 淫靡な息遣いが、チャペルに反響し、パイプオルガンの調べと絡まりあう中、達するのは二人ほぼ同時だった。
 男性の部分から白い蜜を噴出しながら、胎内では愛する人の迸りを感じ…いつもと違うのは、それがもしかしたら…
 「なぁ…赤ちゃん、できるかな?」
 「さぁ…そればっかりは神様の思し召しってやつだろう?」
 いたずらっぽく笑ってみせる遠藤も、もしかしたらそれを少しは期待しているのかもしれない…
 ステンドグラスが色とりどりの影を落とし、乱れたウェディングドレスに色を添える。
 瞳に映る世界の何もかもが綺麗で、そして…幸せだった。





 はっと目が醒めれば、ステンドグラスではなく、見慣れた部屋の天井…
 遠藤の部屋である。
 カイジは起き上がり、がさごぞと自分の下半身を確認し、ほぉーっと、安堵の吐息を漏らした。
 まさか自分にそんなものが出来るなんて、ありえない…大体、結婚なんて…
 と、思ったところで、カイジはサーッと、青褪めた。
 結婚はしたのである…遠藤と。
 以前、ギャンブルの軍資金を借りに遠藤金融の門を叩いた際、担保代わりの生命保険の申込書の代わりに署名捺印した書類が婚姻届。
 結婚しちまえば借金はチャラになると、そのとき遠藤も笑ってたし、カイジも遠藤のことは嫌いじゃなかった。ついでに一応同性同士の婚姻が制度として認められたとはいえ、本気にしてなかったので、割とノリでサインしてしまったのだが…一発逆転をかけたギャンブルでボロ負け。当然金はない。で、結局、婚姻届が提出された。
 そして実際のところ、初夜というには語弊があるが、それでも入籍してから初めての夜を、カイジはヤケ酒かっくらい、泥酔状態で迎え……今は旦那様と裸でベッドの上である。
 ムードもへったくれもないが、現実とはまぁそんなものだ。
 突然、強い腕に攫われて、ベッドに引き戻される。遠藤が目を醒ましたのかと思ったが、どうやら無意識の行動らしい。
 なにやらむにゃむにゃ言ってるので、耳を澄ましてよく聞いてみれば、「カイジ…子供は9人な?」とか言っている。
 夢の続きのセリフをこんな風に聞かされるとは思わなかった。
 ちょっとムカついて遠藤の鼻をつまんで見ると、大きくくしゃみをして、またぐうぐう寝てしまう。
 カイジはクスッっと笑い、ああ、俺、ちゃんとこの人、好きだ…なぞと思いつつ、自分の子供で野球チームを作りたいらしい遠藤の望みを叶えてやれないことに、少し寂しくなってしまった。
 「将来あんたがボケたよぼよぼのジジイになっても、おしめぐらい変えてやるから、それで我慢してくれよな?」
 遠藤は答えない。
 遠藤のぬくもりを感じていると、再びカイジの瞼も重くなり、再び眠りに落ちてゆく。
 少なくとも、今このときだけは幸せなのだという思いを噛み締めながら……
 

 










































 















 あとがき

 某様絵茶の拝観料・・・(私信:参加された方、先日はご馳走様でございました。ネタ、おいしくいただいております)
 タイトルに偽りあり?いえいえ・・・だって、禁断の夢オチですから。
 せっかくふたなりにしたのに、カイジさん、あんまり感じまくってないようです・・・もうしわけない。
  ちなみに、教会とかって詳しくないんで、『祭壇』は間違いだと思うんですが・・・(普通の式場で考えても、人一人横たえるほどのスペースはなさそうだし)それは『花嫁には知らされていないが看板にちっさく『ホテル』と書いてあるチャペルで、祭壇は特注ベッド』だとでも思ってください。