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萌倉庫 季節館
ボリューム的に倉庫の方がを小ネタと言い換えた方がいいかもですが… 季節ものというからには、普通1月か4月がスタートだとは思いますが、最初に書いたのが12月だもんで、年末スタート。
おもいっきし夏が抜けてるわ、一回りしちゃってるのはあるわ、乱雑な倉庫でございます。
○12月 クリスマス 遠藤、事務所でうたた寝中にサンタコスの繭子(分岐A参照)の夢を見て、繭子自身をプレゼントされる直前で、大量鼻血出血(またか)。それに驚いた社員に叩き起こされ、妄想とはいえまたも未遂(つーか、人んちやら会社やらで妄想でイかれたらイヤだ)。 今回はカイジが手中にあるので、無理難題吹っかけて、カイジにサンタコスをやらせようとする遠藤(自分で書いといて、福本絵で今思い浮かべて引いた)。 「あーしょうがねぇなぁ、もう!じゃあ当日、自前で準備してやるから待ってろ」とカイジ、しぶしぶ承諾。 なにか微妙に行き違ってる感もあるが、けっこう『うきっうきっ』な遠藤。 当日…遠藤がマンションの扉を開けると、立っていたのは遠藤が期待していたサンタガール風ではなく、ごくごくプレーン…いや、恰幅のいいサンタ(当然白ひげも)フル装備なカイジ。 「いやー、遠藤さんがホントはジジ専だったなんて知らなかったよ。でも俺のコスプレぐらいで満足しとけよ?あんたのナニ突っ込んだら、ジジイは瞬殺だって」 言葉もなくぼろぼろ泣く遠藤。 「何?泣くほどうれしいの?」 イメージ壊されまくりの遠藤は、ぶんぶんぶんと、ひたすら首を横に振り続けるのみ… 今からこんなこと考えてるあたしの今年のクリスマスも、絶対虚しいことこの上なし…はうっ
・大半の人には、特に必要もない補足ですが…繭子はやっぱご令嬢なので、いつぶっ倒れてもおかしくないような尋常でない恥じらいかたをしながら、カタカタと震える手でスカートのすそをゆっくりと持ち上げるわけですよ。自分からのお誘いなのに、ハタから見ればやらされてる感バリバリで。んで、下着は何つけてるのか、ひょっとしてなんも着けてないのか、うおっギリギリってところで、遠藤目を醒ますと。ちなみにカイジも何度もやっても誘うのは苦手そう…(でも毎度毎度恥じらう姿がいとおしいというか…)
○ 1月 姫はじめ…
準備万端。あとは納得させるだけ… 「カイジ」 「ん?なに?遠藤さん」 「ちょっとだけ返済期間が短くなる方法が…って、待てっ、帰るなって」 「やだ。またヘンなことに巻き込まれるから帰る」 「違うって。兵藤がらみのなんかとかじゃなくって…つまり、俺にちょっとだけサービスしてくれってことだ」 さすがに決まりの悪い遠藤。またかという顔のカイジ。 「あのさ、俺、売春はヤダって、ことあるごとに言ってるハズなんだけど…」 でもそのことあるごとに、ちゃっかりいろいろやられてるので、遠藤とする分には言葉で言うほどイヤではないらしい。 遠藤はカイジの両手を取り、ぎゅっと握り締めて 「別に、ステディな相手にこづかいをくれたところで違法じゃないし、そういう相手と合意ですることしたからって別にどうってことはない。まぁ順序が多少狂って、なおかつお前の借金返済の相手と、こづかいをくれる相手が同じだから、ルートが簡略化されたってだけのことだ。なら、売春じゃないし、正月だから年上のもんが年下のもんにお年玉をくれても、別に不思議じゃない。で、年下のもんが一応成人してるんだから、年上の人間にお礼をしたところでなんの問題もない。だろ?」 なぞと口説く。 借金の原因の人間に、お礼まで強要される時点でどうかと思うが、そうやって遠藤に、強い目で見つめられながら説き伏せられることに、カイジは弱い。 「…道具使ったりとか、ヘンなこと、しない?」 「しないしない。ちょっとかわいい格好してもらうだけ」 大層な(?)口説きかたをした割には、要求が情けない…折れておかないと、また延々と絡まれるので、カイジはしぶしぶ承知した。
「ちょっ、遠藤さん、痛い!」 「いや、多分こんなもんだぞ?…つくづく女ってすげぇよな」 「俺、女の子じゃないしっ!…って、マジでSMじゃないのか?これ」 カイジはぎゅうぎゅうに縛り上げられて、目を白黒させていた。 なんのことはない…着物の着付けである。 この日のために遠藤は、通信教育で着付けをマスターした(さすがに教室に通うのはプライドが許さなかった)。カイジが寝てる間に採寸して、振袖も発注した(店の上品そうなおばちゃんに、サイズで疑惑を持たれたのか、本人に仮縫いに来てもらわないとサイズがあわない可能性が…とか言われたが、それはそれ)。最後は脱がすのに、そこまでするのか?遠藤! ともかく、そんなこんなで、通信教育のテキストとビデオだけで、よくも完璧にマスターできたものだと、ある意味関心するパーフェクトな着付け振りではあるが… 「・・・・・・」 「・・・・・・」 正直、似合わない。あとで帯回し→即えっちを想定していたので、細い腰に補正のタオル等をいれなかったこともあるが…致命的なのは肩幅。やっぱり着物はなで肩の方が… まぁ素体が同じでも、着るもの着せれば繭子になるわけじゃなし(まだ繭子にこだわってるらしい遠藤)。まさか女装させるために全身整形に出すわけにもいかんしな。カイジはカイジでかわいいし。 ぽんっとカイジの肩を叩く遠藤。 「…俺が悪かった。次はメイド服にしよう。パフスリーブとエプロンドレスのフリフリなら、きっと肩幅も気にな…」 言い終える前にカイジの右ストレートが決まったのは言うまでもない。
○
2月
・節分
「いまさら豆蒔こうが、いわしの頭飾ろうが、あいつの運の悪さだけはどうにもなりゃしないんだがなぁ…」 なぞとひとりぼやきつつ、遠藤はカイジのアパートへ向かう。 高級外車でごくごく庶民的なスーパーに乗り付けるのは、カイジの過剰ないたずらほどではないにしろ、ふとどきな輩の10円パンチの的にされかねず、また、潜在的お客様予備軍をいたずらに刺激することもないだろうと、この日の遠藤は電車+徒歩。…ある意味新鮮だが、なんだかなぁ…という気分。 道中でスーパーに立ち寄れば、お子様連れの主婦に混じり、帰宅前に電話ででも頼まれたのか、自分と同世代のサラリーマンが、赤○不二夫デザインの鬼の面付き豆を買う姿を目撃すると、ああ、そういえば自分もそれくらいの子供がいても、まったくおかしくないのだなぁ…などということにうっかり気づいてしまい、なんともいたたまれない。 「大体、ヒーローの面に豆をつけて売るのは、そもそも本来の行事と趣旨が違うよなぁ…正義の味方追い出していいのか?いや意外と、早くヲタクの芽を摘もうという母心かもしれん…」 なぞとぶつぶつ言いながら、それでもなんとか、やはり赤○不二夫の鬼の面付き豆といわしの頭、安酒の『鬼ころし』を買い、スーパーのビニール袋をぶら下げて、カイジのアパートへ到着。 灯りはついてるのでいるらしいが、ノックしても出てくる気配はなく、鍵がかかっている…だが、確かにかすかな人の気配… 遠藤は勝手に作った合鍵でドアを開けた。 「むはっ」 招かざる客の闖入で驚いたらしく、カイジが玄関に背を向けて、肩を震わせ、むせている。 遠藤があっけに取られたのはそのカイジの向かっている方向。 テレビに向かっているなら、ありふれた光景だが、カイジが向かっているのは何もない部屋の角の方角…まさか俺に見えない透き通った、じみーなおねえちゃんが立ってるんじゃないかと、遠藤はざわっとする。 「おい、カイジ」 乱暴に部屋に上がりこむと、遠藤はカイジの方に手をかけ、強引に自分のほうを向かせた。 「むぁんむぁんあよ(なんなんだよっ)」 カイジは黒くて太い棒を口にくわえたまま、しゃべる。 よく見るとそれは太巻き寿司らしい… ようやく太巻きのなかのかんぴょうを噛み切ると、カイジはしばらく咀嚼し、飲み込んだ後、恨めしそうに遠藤を見つめた。 「せっかく恵方向いて、太巻き食ってたのに、どうしてくれんだよ!無言でこれ食いきれば、今年こそいいことがあるってのに、あんたは俺の邪魔したいのか?遠藤っ」 そういえば、そういう習慣が数年前からメジャー化しつつあるということを朝、テレビで言ってたような気はするが、まさか本気で実行してる人間が自分の身近にいるとは考えていなかった遠藤である。 「いいよ、もう。もう一本予備に買ってあるから」 ぷいっと遠藤に背を向けて、カイジはちゃぶ台の上のもう一本の太巻きを、口にほおばった。 両手を添えて縦に口にほおばるその様は…まぁお約束のアレである。 「カイジ、それより俺の太巻きを…」 さすがはオヤジ…典型的なオヤジギャグをかまされ、カイジは激しくむせた。 「ばか遠藤っ!あんたの太巻きなんか、噛み切ってやるっ」 「ばか、それだけはよせっ!お前の丈夫な歯はシャレにならんっ」 ちなみにカイジが恵方だと信じていた方向は実はまったく逆方向…今年も彼の幸福は遠い…
・バレンタイン
やばい…クリスマスにならんで、俺にとって虚しいシーズンがやってきた。しかも今年はあの男が… 「カイジ」 どくんっと跳ねる心臓 来た!遠藤…ここは先手必勝。 「遠藤さん…バレンタインプレイとかはやめよう?」 ぎょっとする遠藤。やっぱりそれか。 「だって、遠藤さん…言っちゃ悪いけど、そろそろ中性脂肪とか、コレステロールとか気になる年頃なんだし、絶対、糖分とカロリーの取りすぎは良くないって」 「何の話だ?カイジ」 「え?バレンタインプレイで、俺にチョコ塗ったくって、俺ごと食べようとか、そういうこと考えてたんじゃないの?」 内心たらりの遠藤だが、そんなことおくびにも出さず… 「そんなわけないだろう?カイジ。ただ、お互い虚しい季節だ。一緒に酒でもと思ってな」 ここでカイジのアパートでなく、遠藤のマンションに誘われてしまい、内心ヤバイと思いつつも、なんとなく一人でいたくない気分だったので、遠藤についていってしまうカイジ…
適度に酔いも回って、なんとなくいたすこととなり、先にシャワーを使わせられたカイジだったが、遠藤の準備がやけに長い… 倒れてるんじゃないかと心配になったカイジが浴室を覗き込むと、遠藤が浴用いすに腰掛けたまま体を丸めている背中が見える。 具合でも悪いのかと、浴室に入り、遠藤の肩に手をかけたカイジは、次の瞬間、やらずぶったくりで、相手がシャワーを浴びてる隙にホテルから帰る援交婦女子のマネして、帰っておけばよかったと、心底後悔した。 「カイジ、今日はバレンタインだったよな」 そこまでやるのか、遠藤… 同じ男としてはなんだか情けなくて、情けなさ過ぎて、かえってこれはしてやらないと収まりがつかない… お湯がわずかしか張ってないバスタブには、溶けたチョコレート入りのボウルと、ホイッパーと製菓用の刷毛…風呂で湯煎にかけていたらしい。 遠藤の股間には準備万端のそれに、先端がとろけるチョコレートでコーティングされていた…
○
3月3日
「…で?」 「ん?」 「どうしてこういうことになってるかって、聞きたいんだけど」 「んー、なんか俺があねさん(にもほどがある)女房設定ってことらしい」 「なんだよそれ?」 「さぁ?」 「つーか、なんでおれが、手錠、足錠かけられて、あんたの膝枕で耳掃除されなきゃならないかって聞きたいんだけど!?」 「あんまり動くと、Eカードの悪夢再びだぞ?今日は3月3日、耳の日だ。錠はかけとかないとお前耳掃除させないだろうが」 「・・・・・・」 よくわからないが、とりあえず耳掃除さえ済めば害はないらしい。仕方がないので不本意ながら、おとなしく遠藤に耳掃除をさせるカイジ。 つっかかってくれないと物足りない遠藤は、あんまりおとなしくされると、ちょっとつまらない。 思いついたように耳かきを持ちかえると梵天(耳かきについてる白いぽんぽん)でカイジの耳の縫い目をふわふわとなぞる。 「やっ…やめろっ…ばか」 「おめぇに膝枕されてみたかったけど、こっちで正解だったわ、俺」
○
4月…入学シーズン
桜が舞い散るうららかな昼下がり、なんとなくほてほてと、二人で歩いてる遠藤とカイジ(車はどうした、車は!) どこぞの高校付近に差し掛かると入学式が終わったのか、初々しい高校生が校門から吐き出されていく。 「なぁ…」 「イヤだからなっ」 「は?」 「セーラー服は絶対着ないし、ブレザーでも、チェックのプリーツのミニスカートなんか、絶対履かないからなっ!」 「そんな、頭抱えて縮こまらなくてもいいじゃねぇかよ。別に、お前の高校時代がどんなだったか、聞きたかっただけじゃねぇか」 「え?コスプレじゃないの?」 「あー、とにかく、ここから離れるぞ?なんか、女の子がかたまって、こっち見てなんかひそひそやってる」 「あ、うん」 カイジ内心:だって、遠藤…日頃の行いが悪いし。でも日常会話くらいそりゃするよな。決め付けて悪いことしたよな。 遠藤 内心:ちっ、ばれたか。でも、言葉尻掴まえたら、チェックのミニスカートはイヤでも、男子のブレザーならOKってことか?でもブレザーなんざ、背広と大して変わらんし、学生はやっぱ学ランだろ、学ラン!
作者の趣味丸出しで、ウチの遠藤さんはどんどんコスプレ大好きオヤジになってゆくあたり…
○ 5月 ゴールデンウィーク
「遠藤さん…ゴールデンウィーク、どっか行こうよ(遠藤さんのおごりで)」 「はぁ?なに言ってやがる。人様の財布の紐が緩むときこそ、金融業者の稼ぎ時だっ!」 どこが萌なんでしょう?(自分で書いて人に問いかけるあたりがダメ) 普段ちょいワルオヤジ気取ってても、結局かなり勤勉な遠藤さんあたりで…
○ 6月 第3日曜日
「遠藤さん、コレ…バイト先でもらっちまったから…」 部屋を訪れたカイジより手渡されたのは、少々しなびた黄色いバラの花束である。 そういえば今日は父の日らしい。 カイジからのプレゼントなんて、今までせいぜい飴玉一個くらい・・・そう思えば、多少しおれていようがホントは花より別のものの方がうれしかろうが、喜ぶべきである。・・・が、あまりうれしくない。 親父?・・・カイジにとって俺は親父みたいなもんなのか? 年の差からいえば、多少早い結婚で出来た子どもくらいの差なので、確かにそれでもおかしくはない・・・おかしくはないのだが、遠藤の心の中ではカイジは年下の恋人なのである。恋する男心としては、自分と同じように彼にも『年上の恋人』と認識して欲しいのだ。 待てよ・・・でも、これはカイジからのプロポーズか?日本で男同士で結婚といえば、戸籍上は養子縁組だもんな。なら、父の日に花束でお父さんになってくれなんて遠まわしなことしなくても、はっきり言えばいいのに。この照れ屋さんめ! 「カイジ・・・なにもいつまでもこんな税金は高いわその税金を無駄遣いする役人がはびこりまくる国の人間ででいる必要、ないじゃないか」 「はぁ?」 「いや、日本で生まれて育ったんだ。それに身内も健在なんだから、日本から離れがたいのもわかる。だがここは、同性のカップルが法的に認められてる国で、堂々と新婚生活送ろうっ!!俺たちは年は離れてるとはいえ恋人同士なんだから、親子はダメだっ親子はっ!!」 カイジ、わけがわからずポカン・・・勤めて1日で接客態度に問題ありでクビになった花屋から、父の日イベント用に大量に仕入れて大量に余った黄色いバラを、一日分の給料と共に餞別としてもらってしまったのである・・・ ついうっかり受け取ってしまったものの、なにやらむかつくわ、でもまだ枯れているわけでもないのに捨てるのはもったいなく・・・そういえば遠藤は男に花束を持ってくるという、妙なヤツだったなと思い出し、それがどんなに気持ち悪いか思い知らせてやれと、意趣返しのつもりで花束を押し付けたのに、新婚生活だなんだ・・・なんなんだ?いったいっ 「・・・という手筈で出国だっ!!その前にウェディングドレスで初夜の予行演習だっ!!」 カイジが言葉の意味を飲み込む前に、遠藤一人でとんとんと話が進んでおり、ぐいぐいと部屋の奥に連れ込まれ、寝室のベッドへ押されてしまう。 ベッドに投げ出されたカイジの体の上に、ふわりと落ちる純白のヒラヒラふわふわなドレス・・・ 今度はコレを着ろと?で、初夜の予行演習だと?・・・初めてでもないのに何が初夜だ、ばかめ・・・とか思ってる場合じゃないしっ パニック状態でなんとか抵抗を試みるも、元は武闘派の男に体力でかなうはずもなく・・・
なまじ馴れないことはやるものではない
○ 一足飛びに冬(ありがちネタ) カイジが風邪をひいたらしい…なんとかは風邪ひかないというが、例外というヤツだろう… 例の如く真っ赤なバラの花束持参で見舞いに行く遠藤。なにやら上気した頬やら潤んだ瞳やらかすれた声やらに期待していたようだが… 『ずびっ』 玄関開ける前からなにやら鼻をかむ音が聞こえ、そのまま引き返そうかとも思ったが、さすがにそれはいかんだろうと、ノブを回せば、すんなりドアが開いた。鍵を閉め忘れるほど悪いのか? 勝手に上がりこんで、奥の部屋に入っていけば、コタツと一体化して丸まっているカイジがそこにいた。 「ん"あ"っ?」 人の気配に顔を向けるカイジ… 熱があるのか確かに顔は上気して真っ赤だし、目も溶けて流れそうなぐらいぐちゃぐちゃに潤んでるし、声も確かにかすれているが、発する言葉全部に濁音がついている。着る布団のようなドテラに額には冷えピタ…憐れは誘うが、期待したような色気は毛ほどもない。 きわめつけは… ずびびびび〜っ 山のようなティッシュの残骸。白いティッシュのバラのところどころに滲む黄緑〜黄土色の粘液が、病人なんだし仕方がないことだとはいえ… ……き…きたなっ…… 別の白い粘液でスーツを汚されるのは平気らしい(カイジにクリーニング代を払わせる、カイジにクリーニング屋に持っていかせる…当然飛ビっ子つき)遠藤であるが、これはいただけない模様。 とりあえず花束を置いて、「まぁ大事にしろ」とじりじり後退りしながら見舞いの言葉を吐いてダッシュ… ばたんとドアの閉まる音と共に一人残されるカイジ。 「あ"…」 何しに来たんだアイツはと、本日二度目の感慨を抱く(ちなみに一度目は佐原。佐原のときに鍵を開けたものの、居間に座り込んでしまったあとで佐原に出て行かれてしまい、取られるものもないしいいか…とそのまま)。 「どーれもいいげどディッジュ…」 テレクラのポケットティッシュすら最後の一枚がなくなり、あとはタオルで鼻をかむくらいしか、道は残されていない… なにはともあれ、特に貧乏人は風邪をひかぬにこしたことはない。
○ 二度目の2月
節分である。
去年、恵方巻の儀式を邪魔されたことで(正確にはその後の失言で)大事な自分の極太恵方巻を食いちぎられそうになったにもかかわらず、カイジの元を訪れる遠藤…
駐車違反の取締りが厳しくなったため、今年も電車で同じルートをたどり、スーパーでお買い物。
ただ、豆を買おうとしたところで、はたと
去年はまだ歯型だけで済んだのが不幸中の幸いとはいえ、まるっきり同じ行動だとまた同じことが起こるんじゃ…
などと青褪めた遠藤は、酒は『鬼ころし』をやめ、焼酎の『魔王』に変更。豆をやめ、一本1000円のこのスーパーでは特上の恵方巻を4本、購入した。
1本は自分、残り3本はカイジが失敗した時の用心らしいが、一人でそんなに食べきれるはずもなく、また特上の具材はほとんど全部トロ・ぶり・などのナマモノなため、いくら気温が低いとはいえ、残した分を翌日の朝ごはんにするには向いていないが、遠藤はあまりその辺のことにはこだわらないらしい。
さて…カイジの家に着き、ノックをしても反応がない…
またしても、勝手に作った合鍵を鍵穴に差し込もうとしたところで、スーッと音もなく扉が開いた。
そこにはカイジが立っていたが、声をかける前にバラバラと、何か硬いものがぶつけられる。
着衣の部分ならばさほど痛くはないが、顔など、露出した皮膚に当たるとなかなか痛い。
「痛い痛い…無言で豆、ぶつけるなっ、恐いっ」
必死で顔を庇い、身をかがめる様子は、さながら追い出され、弱りきった鬼のようである。
よく炒った大豆はなかなかに強力であった。
とりあえず鬼は外の儀式は終わったらしいが…なにか怒っているのか、それとも得体の知れぬ無言の行の真っ最中なのか、遠藤とはひとことも口をきかず、部屋の奥へ入ってしまう。
ただ、鍵は閉められなかったので、遠藤は勝手にカイジに続いて部屋の中に入った。
入ってみれば、今年のカイジはあさってな方を向いておらず、きちんとちゃぶ台に向かって座っている。
台の上には手付かずの恵方巻とペットボトルのお茶。 最初、一緒に食べるために待っていてくれているのかと、ちょっとカイジが可愛く思えたが…
台の上にはどう見ても一本しかなく…切り分けるための包丁もない。
遠藤が何か持ってくることを見越して…ということも考えられるが、先ほどから継続している無言の行といい、どうやら恵方巻の儀式直前で、遠藤が来訪したというのが正しいらしい。
ただ、カイジが今向かっている方角は、今年の恵方とは違うのだが…
遠藤はカイジの向かいにデンと腰を下ろし、どさりと、4本の恵方巻を置く。
遠藤の持ってきた恵方巻のボリューム(太さ比率カイジのそれと遠藤のそれと似たようなもの)と脇からはみ出てる具材からわかる豪華さに、『この成金がっ』といわんばかりに目をむくカイジだったが、ツンと視線を外すと、黙々と自分の分だけ食べ初めてしまった。
おいおい…と思いつつムカついたので、前もって調べておいた恵方と方角が違うことも指摘せず、半ば見せ付けるようにして、遠藤ももそもそ食べ始める。
両者無言のため、楽しい食卓とはいえないが…遠藤が極太太巻きを少し詰まらせ、むせると、カイジが無言でペットボトルを差し出してくれたため、少し幸せを噛み締めた。
「お前、食った後でなんだけど、お前が向いてたの、恵方と違うぞ?」
お茶を差し出され、少し良心が痛んだ遠藤、まぁ残りもこれだけあるんだし、今がダメでも今日中に食いなおせばいいだろうと、今更ながら指摘してやれば、「いいんだよ」とカイジ。
俺とメシを食うことに意義があったのかと、少しジーンとなる遠藤だったが、次の言葉を聞いて、愕然とした。
「ちょっと占いのできる人に聞いたんだけど、俺の場合、恵方は人と違ってて、今年は節分に鬼門を向いて太巻きを無言で食べるといいって言われたんだ」
鬼門とは北東の方角であるが、カイジが向いていたのはそちらではない。だが、鬼門にはもう一つ意味がある。
『行くと悪いことに出あう場所。また、苦手な人物や事柄』
つまり…この場合、遠藤そのものが鬼門ということになるらしい。
「痛い痛いっ、無言で豆ぶつけるな、恐いっ」
先ほどカイジが投げつけた豆の残りをひたすらカイジに投げつける遠藤…
双方気付いていないが、どことなく似たもの同士の二人であった。
○ ハロウィン(いちおロリ注意)
10月31日である。
基本的に遠藤に縁はないが、なにやらまたも西洋かぶれの祭りが日本国内に定着しつつあるらしい。
『お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃうぞ』という、製菓業界が大喜びのキャッチフレーズ。また、10月は体育の日という健全だが消費者の財布の紐を緩めるにはちと弱いイベントしかない月であれば、特に食品業界(次点でオモチャ業界)は、何とか祭りを定着させようとするものらしい。
それでも遠藤には関係ないイベントのはず…だったが…
コンコン
ドアのずいぶん低い位置で、ノックの音がした。
デジャヴに襲われつつ、ドアスコープを覗けば誰もおらず……こそーっとドアを開けて視線を落とせば、ちっこいののでっかい眼と視線がぶつかり、遠藤はやっぱり…と、ガクンと肩を落とす。
ちびカイジ登場……男の子なんだから、魔女っ子スタイルは抵抗するべきだろ、おい。
「とりっく、おあとりーと」
絶対意味なぞわからぬのに言わされてる感バリバリのあどけない口調で、ちびカイジが菓子をねだる。
遠藤もそんなこと言われても良くわからないが、とりあえずそういうイベントがあるということだけは、なんとか常識として憶えていた遠藤氏…ただ基本的に野郎の一人暮らしなので、お菓子もなければかぼちゃもない。
一緒に買いに行けばいいのだろうが……ちびカイジ、本日のファッションは魔女っ子。これが困ったことによく似合い……大きなお友達の人気者になりそう。その中でもタチの悪いのに、ちょっと目を離した隙に誘拐でもされたら非常に厄介。
見たところ、今回は着替えも持ってきている様子はない。
今日はお泊りはないのかと、ほっとしつつもちょっぴり残念という感情は気付かなかったことにして、「留守番できるか?」と遠藤が問えば、小さいカイジが「うん!」と大きく頷いたため、お守は犬のカイジにまかせ、遠藤はスーパーでお買い物。
帰ってくれば、ちびカイジは寝室で犬カイジと共に、すぴすぴと可愛らしい寝息をたてており、遠藤はそーっと寝室のドアを閉めると、カイジを驚かそうと、こっそりかぼちゃのランタンの作成にとりかかった。
無骨な手を見れば、あまり繊細な作業に向かないイメージのある遠藤であったが、昔はブラモデルを作ったりが好きな子供であったのか、意外と器用なタチであったのか…ついでに凝り性でもあったらしく、悪戦苦闘の末、遠藤自身はどうやら納得のランタンが出来た頃、カイジが眠い目をこすって、寝室から出てきた。
暗い寝室に灯りを灯して驚かそうと思っていたが、見られたなら仕方がないと、ちょっと残念な遠藤である。
…遠藤が手にしたかぼちゃを見て、カイジは一瞬ぱちくりと大きく目をさらに大きく見開き……じわりと涙を滲ませたかと思えば、ふぇ…っ…っと泣き出してしまった。
遠藤の「驚かす」という楽しみは達成されたようであるが、どうやら薬が効きすぎたらしい。
仕方なくちっこい体を抱き上げて、よしよしと背中を擦りながら「男の子がこれくらいで、泣くな。弱虫だな」と言葉をかければ、カイジは遠藤のざらざらする両頬を小さな手で摘まんでひっぱった。
「よわむしじゃらいもっ!あれがちがうんらもっ!」
そういいながら、またふぇっくふぇっくと泣き出してしまう。
確かに……ジャックオランタンと言えば、黄色い観賞用かぼちゃに目鼻を三角に口は歯並びの悪い口が笑っているような風にくりぬいたものが一般的であるが遠藤のそれはかなり違っていた。
グリーンのごつごつした食用かぼちゃの目はくりぬかず、実の黄色と皮の緑を生かして彫刻で、ぎょろりと睨みつける恐ろしげな目を表現し、鼻もなにやら立体感があり、くりぬき、テスト用に灯りを灯した口は、牙を突き出してニッと笑っているかのよう…手っ取り早く言えば、秋田のなまはげのかぼちゃ版のようなものである…
店頭や街のウィンドウにディスプレイされたジャックオランタンを思い出しつつ、確かに違うかもしれねーが、日本人なんだから、和風にアレンジもありだろうがよ…と、ひっぱられてひりひりする頬を撫でつつ、ちょっと傷ついた遠藤氏。とりあえず泣く子に困ったので、お菓子で機嫌を取ることにした。
「飴、食うか?」
「うん!」
鳴いたカラスがもう笑う。現金なものだと思いつつ、それがまた可愛らしくもあるのだが…与えた後で遠藤は自分の買い物の大きなミステイクに気付いてしまった。
遠藤の年代であれば、同じ生まれ月の兄弟の誕生日をまとめて一緒にされることも、それが例えば12月であれば、誕生日が12月の1日であろうとクリスマスと一緒にされることも、珍しいことではあるまい。まぁ近いイベントはまとめて祝われてしまう中流家庭 の出身である。で、洋物より和物好きで、買い物に行ったスーパーもそろそろ七五三の準備をしており…
菓子ならなんでもいいだろうと、そして11月は来るか来ないかわからん上に、実年齢はハタチ以上だが、なんとなく現在の見た目年齢は五くらいだから、せめて千歳飴で祝ってやるくらい…という、大雑把だが確かに愛情ゆえの行動だったのだが。
おそらく味はメーカー的にいちごのミ○キーのバータイプだろうという、ピンクでロングな千歳飴を、舌先でちろちろと舐めるその様は、幼いゆえに無自覚なのだろうが、なにやらいけない妄想を駆り立てる…
その舐め方をやめろと言ったところでこの場合、いやらしくない舐め方なぞはたしてあるのかどうなのか……最後は見る側のイメージの問題である。
俺はそんなに細くない、細くない…と、自分のナニと比較してる時点で、それがいやらしい妄想だと肯定してしまっている以上、遠藤ももはや手遅れ。
遠藤的には、お菓子をくれてやっても、いたずらされているようなものであった。
○ サンタ。(ちびカイジネタ。ホントにネタだけ放り込んである状態)
ちびカイジと遠藤がクリスマス一色の街中を歩いていると、いきなりちびが遠藤のコートの端をちっこい手でぎゅって握って足を止め、なにごとかと遠藤が足元を見れば、ちびカイジ上目遣いで遠慮がちに
「……あれ…やって」
と、サンタ姿のカーネ○サンダースを指す(別にサンタ姿ならティッシュ配りの人とか客引きで看板持ってる人とかでも可)。 遠藤、柄にもないことゆえ、
「バカ、そんなことできるか」
と小声で怒鳴り顔を赤くするものの、怒って顔面が紅潮しているわけではない。
だが、ちびは本気で怒られたかと思って、無言で大きな目からぽろぽろ涙をこぼしてしまう。
遠藤は小さく溜め息をつき、それでも握る手を離さないコートから、小さい指を外し…でもまた握ろうとするから代わりに手を握ってやれば、ちびカイジ、目をさらにうるうるさせて
「らって、おとうしゃ…」
と言葉を詰まらせ、えぐえぐと泣き始めた。 そういえばコイツ、母子家庭だったな…と遠藤は思い出し、もしかしたら父親との数少ない思い出だったのかと、さすがに不憫になり、一度マンションへ戻り、カイジが寝ついたら、某激安量販店までサンタ衣装を買いに行き… でも明るいところでそんな格好するのは照れくさいから、ちびカイジの枕元にプレゼントを置くときに、一応そんな格好をして、ぐっすり寝てて見てないならそれでいいやと思ってたら、ちびカイジ寝ぼけまなこでも気配を察して、サンタ服を握って離さないから、遠藤も仕方なくサンタの恰好で添い寝。 ちびカイジは、懐かしいパパと、大好きな遠藤の夢を見て、すぴすぴ寝息を立てながら、にっこり幸せそうに微笑んだ。
○ クリスマスプレゼント(もしくは冬のボーナス) ※勇次受要素あり
通常、代表取締役等の役職につくと、前年度の業績に応じてその年のお給料が決まるので、ボーナスとは無縁の存在のようですが、帝愛系列会社の社長さん方は、業績に応じて会長からポケットマネーが振舞われるようです。
但し、税金対策なのか『ビンゴの景品』ということになるようで……
我等が遠藤氏が引き当てた景品は『大人のクリスマス』。
何のことやらわかりませんが12月24日には鍵を預け、なおかつ靴下を片方ではなく一足、枕元に用意するようにとのお達し。
帝愛側に鍵を預けるのは不安ですが、拒めば来年のビンゴの権利は危うく、かつ、仕事を減らされる可能性もあるため、そういうわけにも行きません。
遠藤氏『靴下が両方……てことはデリヘルか?でも、もしかして入るだけの現金の可能性も捨てきれない』
などと悩んだ挙句、現金だったら『破れたらアウツ』とか言い出しかねないと、懐かしのルーズソックスを取り寄せ、クリスマスイブに枕元に置きました。
さて、目を閉じてもドキドキそわそわ……遠藤さんは眠れません。
枕元にプレゼントなんて、一体いつ以来で楽しみだから?ノンノン!……遠藤さんも健全な男性。デリヘルの変則版であることの可能性を考えれば、そりゃちょっとは嬉し恥ずかしですが、それより心中を占めているのは、恐怖…なんてったって、あの帝愛に自宅の鍵を握られてるのですから、恐くないはずはありません……
やっぱ権利放棄しとけばよかった。そんな後悔してももう遅いというものです。
そうやって、ベッドで羽根布団に包まって、遠藤氏が悶々としてるうちに、かすかに玄関のドアが開く音。
それから少し遅れて、遠藤氏のいる寝室のドアが、気配を殺すようにそーっと開き……こそこそと誰か忍び入ってきた様子。
闇の中、忍び入った人物は、手探りで遠藤氏の枕元を探り、靴下を取り上げるとごそごそと身に着けているようです。
ここで灯りをつけるのはルール違反の気がしないでもありませんが、もしイヤガラセで未成年などあてがわれた日には、目も当てられません。
遠藤氏はベッドサイドの間接照明をつけました。
闇に浮かび上がったのは……
「カ…カイジっ!?」
「あ……」
無駄な肉のついていないしなやかな裸身に、ルーズソックスという、アンバランスさが艶めかしく、同時にまぬけな姿のカイジがベッドにもぐりこもうとしているところでした。
「チェ…」
ムチムチプリンなお姉さんならまだしも、何だこのバツゲームはという感情の発露で、思わずチェンジと叫びかける遠藤の口はカイジの両手にふさがれ、続きはもがもがと意味のない物になります。
「……頼むよ、最初にあんたのところに当たったのが、俺の唯一のラッキーなんだよ。チェンジとかされて、別のところに回されたら、何されるかわかったもんじゃない」
小声で早口に捲くし立てるカイジが、やたら背後をチラチラ気にするので遠藤もそちらを見てみれば…
「ヒッ!」
と、悲鳴に似た声が上がってしまいました。
遠藤が声に出しかけ、でもとっさに殺したため、悲鳴まがいのものになった言葉は…
『髭しかあってねぇっ!』
真っ白なお髭は確かにサンタさんで通りそうですが、シミだらけのお顔しかり、いつもの和服姿しかり…特にまとわり着いている邪悪な空気は、一般的なサンタクロース像とはかけ離れています。
そこには兵藤会長が、勝手に椅子を持ち込んで、二人の様子をじーーーーーっと見ていました。
「頼むよ、何かしてくれよっ!でないと…」
どうやらカイジ、また会長とのギャンブルに負けて、どうやら今回は『景品』をやらされている様子。
遠藤はムッとしました。
自分の意思でプレゼントになりに来てるなら、薄ら寒くもありますが、それでも実は嬉しいのです。
でもこれは違う……この馬鹿に思い知らせるには、世間の厳しさを思い知らせねばなりません。
他の男に抱かれるカイジを想像して、それはそれでイラッとしましたが、それでもバカな犬は叩いて躾けないと覚えない…
再度チェンジと開きかける遠藤の口を、カイジは唇で塞ぎました。
すごい勢いだったため、双方の歯がぶつかり、ガツンと衝撃が襲います。
「わかった、いい。アンタが何にもしなくても、要は見世物として成立してればいいんだから」
何事かと思えば、いつの間に脱いだルーズソックスの片方で、遠藤の手首を縛りあげ、もう片方を猿轡にして咬ませると、カイジは暴れる遠藤の両足を大きく割り抱えあげ…
ベッドの上は見学者がいるのを忘れたかのように異様な盛り上がりを見せる一方、見学者の邪悪和製サンタといえば……期待以上の面白い見世物になっているにも関わらず、年寄りを襲う睡魔には勝てず、こくりこくりと舟をこぎ……のちにビデオで見て、ライブで見逃したことを非情に後悔したとかしないとか……
○ホワイトクリスマス
なにやらそわそわと落ち着かない従業員たちを早く帰宅させ、最後に事務所を出ればやけに冷え込んでいる。
ふと気がつけば空から白いものが舞い降りてきた。
「雪……か」
通常の少なくとも2倍はいると思われるカップルたちは、空からの贈り物になにやらはしゃいだり、さらに二人の世界に浸ったりしているが、遠藤にとっては寒さの元凶のようで疎ましいばかりである。
毎年このシーズンは、ひとり手酌で適当なビデオでも見て、適当なところで寝てしまうのが良い。
ブルッと身震いすると、遠藤はコートの前をかきあわせ、早足で駐車場まで行こうとする。傘はない。
「エンドーさん」
ふと、暗がりから聞きなれた声がした。
カイジである。
「なんだ?今日の営業は終了だ。こりもせずウチから借りるつもりなら、明日出直して来い」
「そうじゃねぇよ」
ほっぺたやむき出しの指先を赤くして、震えながら手を擦り合わせ、時々てのひらに息を吹きかけてわずかな暖を取るさまを見れば、この寒空をかなり長い時間、突っ立っていたのがうかがえる。
「これ……短期だけど仕事見つかったから、あんたに酒でも奢りたくて……でもまだぜんぜんだから」
差し出されたのは缶ビール2本と簡単なつまみの入ったコンビニ袋。
―このコンビニなら立ち読みでもしながら、ウチの様子も窺えるだろうに……バカか、コイツ。
呆れながらも胸の奥がくすぐったく、またジーンと暖かい。
「ホントに職が決まったんなら奢ってやるぞ?」
「それじゃぁ俺が、メシたかりに来たみてぇだろうがっ!」
「じゃぁウチで、晩酌に付き合え。毎年一回やってる深夜の…あれ。不幸自慢大会みたいなヤツ……あれ好きなんだけどよ、一人で見てるとちょっと寂しくなってなぁ……」
「寂しいってガラかよ、悪徳金融がっ!」
他愛もない軽口を叩きながら、二人並んで歩く。
今年の遠藤のクリスマスは、少しだけ幸せだったらしい。
※※※
これで遠藤さんが、『コイツがもうちょっとコンパクトな女だったりしたら、コートの中に入れてやったのになぁ……』とか残念がってたりするのも、可愛いんじゃなかろうかと。
他に萌えるシチュだと、遠藤さんのためにお店を休んできてくれるおねーさんと過ごしていても、明石家サンタ見ながら、遠藤の知る不幸が最も似合う男の姿を思い浮かべて、ああアイツ、どうしてるかなぁ……と思いを馳せていたりとか(で、寝言でカイジの名前を呟いて、ねーちゃんにぶん殴られて振られると)。
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