ちびちび 2


 金に恫喝、まぬけを騙して陥れ…酒とタバコとたまに女。
 適度な刺激と、適度な野望にあふれた日々…
 一応上場企業の傘下にある、中小企業の社長ということになるが、書き手によっては、充分ハードボイルド小説の題材になりそうな日常に、彼は身を置いていた……はずだった。


 「カイジちゃん、おトイレ上手にできまちたね〜」
 事務所前に捨てられていた仔犬を保護…だけならまだいい。そのペットに惚れた相手(♂)の名前をつけ、なおかつ『ちゃん』づけ(『たん』で呼ぶのはなにやら自制しているようだが、ここまで来たら目くそ鼻くそである)、そしてペットの躾が幼児語…
 ハードボイルドには程遠いところに、遠藤は来てしまっていた。
 ふと我に帰った彼自身、気付くとサーッと青褪めるが、彼が失ったものを、無意識が必死で補完しようとしている代償行為なのである……愛くるしいわんこの前では理性は決壊……できる自衛手段といったら、できるだけ人目を避けて、自分のテリトリーから遠く離れた公園で散歩することくらいである。

 悪徳金融業社長、遠藤勇次の異変はこれだけではない。
 日曜日の早い時間、『子育てお悩み相談』的番組をやっていれば、なにやら食い入るように見てしまうようになっていた。
 彼は結婚していないので当然、戸籍上に子供はなく、愛人がこっそりこさえていた隠し子を押し付けられたわけでもない…
 わんこを拾う前日、わんこの名前のもともとの持ち主で、やはり仔犬のように愛くるしいちっこいあの存在に、遠藤は我知らず、魅入られてしまったようであった。



 さて…
 冬に差し掛かった、ある土曜日の深夜…遠藤が犬の散歩より戻り、わんこをケージに戻したころに、小さくノックの音がした。
 深夜の来客には馴れているが、なにやらノックの位置が低い。
 控えめに…だが、繰り返されるノックの音にデジャヴ…
 まさかと思いながらも、チェーンは外さぬまま、用心深くそーっとドアを開けてみれば、目線の遥かしたの位置に、以前見た生き物。
 「えんどうしゃん」
 なにやら自分を慕ってくれているらしい、ちびっこくなったカイジがはにかむような笑みを浮かべて、再びそこにいた。

 
 多分、またヤツの仕業だろうと、なじみの黒服のケータイを鳴らせば、当然のように『電源が入っていないか…』のアナウンス。
 以前のように、やはり体型に対してでかすぎるリュックをチェックしてみれば、『明日の夜、迎えに来る』のメモ書き。
 やはりこれはウチで預かるしかないのだろうと、小さく溜め息をつく遠藤だが…面倒ごとに対するというより、小さな来客の短すぎる滞在と、またすぐに来る別れに対してのものだとは、彼自身、気付いていない。
 まぁ今回は、丁度いい遊び相手もいることだしな…などと、 ミルクを温めながら、キッチンから居間を見やれば、ケージの中の犬小屋に仔犬を見つけ、「わんわんたん、わんわんたん」と、カイジがはしゃいでいる。
 お子様用に甘くしたミルク入りマグカップと、子犬用のミルク入り餌皿を手にして居間に来たところでちびっこに「わんわんたんのおなまえは?」と聞かれ、遠藤は一瞬地蔵になった。
 「……わんわんさんだ」
 「?…おなまえ…」
 「だから、わんわんさんだっ!!」
 カイジが一人と一匹ではなにやら混乱するということももちろんあるが、ペットに同じ名前をつけていたと知られるのは、恋しくて仕方なかったと告白するのも同じで、なにやらこっぱずかしく、大人気なく声を荒げてしまう。
 ちびカイジは、少し不思議に思ったようだが、それでもさほど気にした様子もない。
 ケージから犬カイジを出してやると、動物好きなのか、カイジは仔犬の柔らかい毛皮にワサワサ触り始めた。
 無遠慮っぷりが不愉快なのか、機嫌悪そうな顔をしつつ、それでも犬カイジは黙って拷問じみた愛撫(?)に耐えている。
 「ほら、わんわんはミルク、お前もミルクだ。冷めちまうぞ?」
 それでもしばらく、わんわんさんこと犬カイジが、ミルクを舐める姿を興味深げに眺めていたカイジだったが、やがて遠藤の座るソファーにやってくると、「おひざのうえがいい」と、遠藤の足元にまとわりついてきた。
 なんだか、遠慮がねぇなぁ、コイツ…と思いつつも、ミニマムな両脇に手を入れて、ひょいと抱き上げ、膝の上に座らせてやると、カイジは満足そうににっこり笑う。
 人間椅子の上で、少々お行儀悪く、足をぶらぶらさせながら、両手でマグカップを持って、んくんくとミルクを飲むカイジを見て、遠藤はふと微笑んでいる自分に気付き、これではいかんと、顔を引き締めたが、いかんせん、間が持たない。
 ニュースでも見るかと、リモコンでスイッチを入れれば、深夜にも関わらず、メカ物のアニメをやっていた。
 アニメは子供のものという遠藤の常識では、こんな時間にアニメをやることなど考えられず、一瞬口をあんぐり開くが、そういえばス○パーとか、24時間マンガをやってるチャンネルもあるっていうしなぁ…と、思い直し、男の子はロボットが好きだし、丁度いいだろうと、チャンネルをそのままにしておいたのだが…
 そのうち画面では、コスチュームはボディーペイントと言っても差し支えないような露出度高すぎのむちむちぷりんな女の子と、主人公らしき男のキスシーンが展開して、しかもなにやらそれ以上のことにまでなりそうな雰囲気に、遠藤はあわあわと、大慌てでテレビを消した。  
 時代はどんどん、遠藤の常識からかけ離れた方向へ、進化しているようである。
 「ちゅーちてた」
 「そ…そうだな」
 カタンと、テーブルの上にマグカップを置くと、カイジは遠藤の体によじ登り、うちゅーっとくちびるを遠藤の口にくっつけた。
 あんなものを見た後である。多分悪い影響でこんなことをしてるのだと思えば、よせ、やめろと引き剥がし、注意したいところだが、先日見た育児相談番組の『子供にはスキンシップが大切』という言葉も思い出し、遠藤はどうするべきかおもいっきり判断に困った。
 遠藤の子供ではないが、前回来た時のカイジが遠藤を見た時の第一声は『おとーしゃん』である。
 おそらく父代わりとかいう説明を受けているのかもしれず、また、今後の展開次第では、ホントに自分が育てることになるかもしれないと思うと、うかつにスキンシップの拒絶をするのもどうかと思う。
 それにしても、子供のうちゅーは、なんかべとべとしてやがるわ、なんつーかこー乳臭いわで、大人は欲情しないようにできてるんだなぁ…神様は良く作ったもんだ。それにしても、こないだ『乳幼児に口移しで物を食べさせると、虫歯が移ることがあるのでやめたほうがいいでしょう』とかなんとか言ってたよなぁ…そういえば、コイツの歯は乳歯に生えなおしてたりしねぇよなあ、おい。
 むやみやたらとちゅうちゅうするカイジの扱いに困りながら、ぐちゃぐちゃ考えていた遠藤は、不意に乳歯疑惑に思い至り、カイジをひっぺがすと、口端に指をつっこんで、むりやり「いー」をさせる。
 白くて立派な歯がきれいに並び、どうやら歯は大人の歯のまんまらしい。
 遠藤はほーっと、安堵の溜め息をつく。
 永久歯同士でもキスで虫歯が感染しないとは限らないが、そこはまぁ、気分の問題。
 カイジはわけがわからずに、おもいっきり不思議顔である。
 「あー、もう遅い。歯ぁ磨いてねんねだ、ねんね」
 まだ眠くないのか、不満そうなカイジをよそに、リュック内を漁り、子供用歯ブラシを探しあてる。
 それにしても今回も、お子様、青年、両方用の基本お着替えはあるのに、パジャマだけがない。
 ちびカイジが自分で荷造りするとすれば、お子様用だけを詰め込んできそうなものであるから、荷造りは誰か別の人間がしているようであるが、その人物には『寝巻き』という意識が欠落しているとしか思えない。もしくは、実は寝ている間だけ、元に戻っていることがあるため、あえて大人用Tシャツをパジャマ代わりにさせているのか…
 まあいいか。
 とりあえずいっしょに洗面所に行って、どうにか歯を磨かせたものの、まだわんわんと遊びたそうな素振りのカイジにバンザイをさせ、子供服のセーターとシャツを脱がせると、ズボッっとでかいTシャツを被せてお着替え完了。
 それでもまだ寝たくないのか、ちびカイジは悪あがきのごとく…
 「おふりょは?」
 「今日はもう遅いから明日」
 「いっしょにねんねしてくえる?」
 寝ることへの妥協案らしい。
 目が零れ落ちそうに、なにやらうるうるしているのを見れば、ダメとも言えない。
 「……まぁ、今日は冷えるしな」
 さあ、ねんねだと、カイジを抱えあげ寝室へ…
 でっかい方がこの扱いを受けたら、屈辱で青ざめそうだな。
 わかりやすすぎるその反応を思い浮かべて、遠藤はつい、にやけてしまう。
 ちびっこい方も可愛いっちゃ可愛いが…アレとはもう、ずいぶん会ってねえよなぁ…
 ヘタをすると一生…もしくは、自分が一般的には年金を受け取るような年頃に、彼の愛したカイジの年齢になりそうである。
 ふと心に冷たい風が吹き抜けたような気がした。
 忘れ形見を残して女房に先立たれた夫のような気分である。
 そんな、縁起でもない。
 頭をぶんぶん振って、ろくでもないイメージを頭の中から追い出そうとする遠藤…そんな遠藤の百面相を見て、カイジはきょとんと不思議顔。ただ、やはり寂しそうだということはわかるのか、遠藤が着替えてベッドにもぐりこんでくれば、むぎゅっと抱きついてきて、小さな手で遠藤の少し白髪の混じった頭をなでなでした。
 こんなちっこいのに同情されるとはなぁ…
 だが妙なところで人好きお人好しなカイジである。このころから片鱗があったとしてもおかしくないのかもしれない。
 ぬくもりに癒されて、遠藤は眠りに落ちていった…



 女やら、大きい方のカイジやらが隣にいても、眠りについてしまえば、途中で目が醒めることなどほとんどないのに、どうもちびっこだと勝手が違うのか、眠りを中断されてしまう性質らしい…
 なにやらがさごそする気配で、微かに戻りかける意識を強引に引き戻したものの、下半身のあたりで、なにやらもぞもぞと動いてるのを察知して、「のわっ…」と妙な声をあげてガバッと跳ね起きれば…ちびカイジが遠藤のパジャマのズボンと下着を下ろしていたところだった。
 「おっ…おまっ…なにっ!?」
 わなわなと震えて指を差しつつ……動揺を隠し切れない。
 寝てる間になにかのはずみで大きくなったブツが不思議で、子供らしい好奇心から確認しようとしていた…とも、考えられなくはないが、これはどこをどう見ても、ぱくっと行くところを中断された体勢である。
 「あのね、よしょのおとこの人のおうちにとまるときは、これをやりなしゃいって…」
 「そんなこと言ったのは誰だっ!?」
 そんな教育は早すぎ…もとい、誤った教育である。
 遠藤のあまりの剣幕に、びくびく震えながら、ちびカイジは小さく「……んとね…おじいたんとおにいたん」と答えた。
 おじいたんに心当たりありありで、遠藤は頭がくらくらする。
 通常時カイジを嫌な意味で気に入っていたことを考えれば、それはどう考えても兵藤会長である。
 いくら常軌を逸してるとはいえ、こんな子供に…だが、戸籍上の実年齢を考えれば、成人式はとうに過ぎてるんだから、あのジジイならそれくらいやりかねない。
 「カイジ、ちょっとそこに座りなさい」
 「?」
 本来、ほめられるべきことをしようとしてたのに、なにやら遠藤は怒っているらしく、ちびカイジにはわけがわからないが、とにかく、遠藤が必死で怒りを抑えていることはわかったので、遠藤がパジャマを直してベッドの上で正座するのにならって、カイジもちょこんとその場に正座する。
 「お前、こんなこと、他にやったことあるのか?」
 「…ん…おじいたんとおにいたん。はちみちゅとかチョコとかぬってくれたよ?おじいたんたち、きもちいいって…でもやだった」
 戯れで教え込むだけならまだしも、実技講習済みとは…遠藤はズキズキ傷むこめかみを押さえた。
 「それはな、泊めてもらったお礼とかそういうことでするもんじゃないっ」
 「…?おじいたんたち、うそちゅきなの?」
 「……ああ、そうだ」
 後でなにを言われるかわかったもんじゃないが、そもそも戸籍上はともかく、今は完全に幼い相手に対して、そういうことを実技込みで教え込んだ人間の方が悪い。
 「じゃあ、どういうときしゅるの?」
 最初の段階で、話の持っていきかたをどうやら間違ったようである…困った。
 「それは、好きな人と…なんだ…結ばれるときに…その…」
 必ずしも必要な行為ではないので、これも説明に困る。大体、今はAVやらなんやらの影響で、一般的になってしまったが、遠藤の思春期の頃なら、変態の領域の行為であるのだ。
 「……でも…でも、ぼく、えんどうしゃん、しゅき…」
 「だーかーらーそういうことじゃなく……あのな、そういうことは……そう、おっきくなってからすることだ」
 「おっきくなったりゃしてもいいの?」
 できれば見た目、中身とも18歳以上の成人になってからが望ましいが、そこまで説明するのも面倒くさいので、「ああそうだ」と答える。
 「……わかった」
 「いい子だ、じゃあ、もう寝ろ」
 「…うん」
 本当は心中穏やかでないが、とりあえずこれで一安心…と、カイジを布団にもぐりこませ、自分も布団をかぶり…ただ、ついさっきのことを思うと、だっこで寝てやるのもなんだかなぁ…と思い、ちびカイジに背中をむけると、背後の人間の質量が、いきなり増大した気配がした。
 いきなり子供のものとは思えない腕が、すごい力で遠藤に抱きついてくる。
 「えんどうしゃん、おっきくなった!」
 なじみの声、恋焦がれた声…であるが、それで無邪気に幼児語をしゃべられると心臓に悪い。
 それにしても、こんないい加減なクスリを作ったやつはどいつだっ!!責任者出て来い責任者っ!!
 「えんどうしゃん、おっきくなったよ」
 「…あ…ああ、おっきくなったな」
 冬なのに、だらだらと嫌な汗がとまらない…どうしたもんかな、これ。
 「してもいいんでしょ?ねぇ」
 カイジ本人は甘えてるつもりで、ぐいぐい全身で締め上げるように抱きついてくる。ふと下半身に感じる、なにやら別の意味でおっきくなってるものの感触に、ちょっと待てっ…の、遠藤。
 「おまえ、ぱんつわっ!?」
 「きちゅいからぬぎぬぎちた」
 いきなり自分がでかくなったら、もっと動揺しても良さそうなものだが、お子様とはほとんど本能に支配された動物のような生き物である。今のカイジにとっては欲望の充足の方が急務らしい。
 子供にも性欲はあるらしいが…これは行きすぎと言っていいだろう。なにやらがさごそと、また遠藤の股間のあたりをまさぐってくる。
 「お前、おじいちゃん達にするのやだったんだろっ!?」
 「うん、でもえんどうしゃんならちたい…」
 どうでもいいが、その言葉遣いをどうにかしろと言う前に、無理矢理首をねじられて、うちゅーをされる。いきなり大人の筋力になったものの、中身は子供のままなので、力加減の制御がまったくできず、遠藤はおもいっきり首の筋を違えた。
  筋を違えた拍子に、ついでに別の神経まで、ぷつんと切れたらしい…
 見た目は元のカイジそのものから、理不尽な暴力(子カイジにとってはいたって無邪気)を受け、ついでに初めてのとき同様、へたくそなキス…
 怒り半分、条件反射半分で、遠藤はほとんどプロレスの如く体勢を入れ替え、噛み付くようにくちびるを割り、舌をねじ入れる。
 仔犬が飼い主にじゃれるような親愛の情でちゅーをしていた、ウブそのものの見た目は普通、中身はちびカイジは、いきなりの凶暴な大人のキスの洗礼に怯え…跳ね除けるなどの積極的防衛にまで頭が回らず、ひたすら身を硬くし、舌先も、遠藤の凶暴なそれから逃げようとするが、あえなく捕らえられ…強引に吸われたかと思いきや、その次の瞬間には優しく舌先で口内を愛撫され…
 わけのわからぬまま、頭の中は真っ白である。
 くちびるに透明な糸を一瞬紡いで離れた遠藤…ぽわんと蕩けてるカイジを見て、そういえば中身はガキだったと、今更ながら、サーッと青褪めた。 
 「えんどうしゃん…にゃんか、ふぇん…」
 へんと言いながら、語尾やら吐息やらになにやらハートマークがくっついていて、暑苦しくベタベタいちゃいちゃくっついてくる。
 通常時、ありとあらゆるテクニックと、非合法スレスレの妖しげなおくすりを用いても、ここまで蕩けるかどうか、微妙なところ…というより、あの意地っ張りを屈服するのが楽しいのである。ともすれば嫌われるかもしれないが…それでもカイジとベッドを共にすることは、自分に対するカイジの感情を量るための、贅沢なゲームと言ってもいってもいい。
 最初っからこの状態というのも、それは確かに可愛いのだが…刷り込み状態のおこちゃまと恋のパワーゲームなど、大の大人の男がやるこっちゃないのである。
 「だめだっ、お前には大人のあれこれは早すぎるっ!!」
 「やぁっ…」
 「だめだったら、離せっ」
 火をつけるのは簡単だが、消火活動は困難を極めるものである。
 不毛なバトルは明け方近くまで続いた…


 ひっつく側も拒む側も、お互い疲れ果てて、どちらともなくストンと眠りについて数時間後…
 わんこカイジがエサを欲しがる泣き声で遠藤は目が醒める。
 一足先に目が醒めていたのか、なにやらまたちびサイズに戻ってしまったカイジが、ぐずぐず泣いていた。
 「…えんどうしゃんの…ばかっ!!」
 おはようございますの代わりの挨拶がそれ。
 遠藤は困って、頭をバリバリ掻く。
 そりゃ、年頃の娘さんとかなら、恥かかされたってことになるかもしれんが、こんなちびっこが…
 ただ、ぐずぐずないてぶんむくれてる原因の、十中八九が自分が拒んだことによるものだとは思うが、もしかしたら、原因は別にあるかもしれず、うっとうしいという理由だけで、どこぞの虐待親父のような真似をするわけにもいかない。
 「ばかっ!ハゲッ!!…もう…もう…き……」
 どうやら『嫌い』と言いたいらしいが、子供心にそれを言うと全部が終わってしまうような気がしているらしく、『ら』の形まで口が開きかけて、ぎゅっとつぐみ、目に涙をいっぱいためる。
 言ってもわからんだろうしなぁ…ついでにこの俺が『お前が大事だからそういうことはしない』とか言うのも、思いっきり嘘くせえ…つーか、心も体も元に戻ったときに覚えてられてたら、やっかいだしな。
 習慣的にタバコを咥えて火をつけて…いかん、子供に煙は毒だと、あわてて灰皿の上でタバコを潰す。
 『嫌い』と言いたいそぶりがありありなのに、ちびカイジは遠藤のパジャマの裾をぎゅっと掴んだまんま、離そうとしない。
 それがなにやら、いとおしかった。
 大きい手を小さい頭にぽんとおいて、
 「ホットケーキでも食うか?」
 と聞いてみれば、ご機嫌は斜めのようだが、ちびカイジは素直にうんと頷いた。
 「…どっか、行きたいところとか、あるか?」
 「わんわんしゃんとおしゃんぽして、あとはずっとえんどうしゃんといっしょにいゆ」
 これに遠藤の胸が、なにやらきゅんと疼いてしまった…
 どうやら父性に目覚めてしまった遠藤。
 あんなろくでなし大王の納める帝愛なんぞに大事なカイジはやれないと反旗を翻し、強大な権力相手に壮大なる戦いを挑むことになった

 ……かどうかは定かではない。
 
 
 






























































 あとがき


 おもいつきだけでなにかをするとロクなことにならないという見本…(前にもこんなこと書いたっけか?)オチがないのが一番困るよなぁ…くすん。
 うちゅーっ、でたじたじどころか……うう〜っ…
 いちおう『おいろけしょたぢごくかいじ?』みたいなてきとーなタイトルもあったんですが、かいじしゃんの見た目設定がかなりちっこいはず…なので、鯖倫その他いろいろまずいでしょうと、おじいたんとおにいたん(まぁあの親子で)になにを仕込まれたかは、それほどわからんように…なってるかね?(微妙)