奇跡の価値は…?



 心が通じ合ったのが、死の間際なんてひどすぎる…

 俺の人生が今までどうしようもなかったのは、誰か本気で好きになれる人が現れなかったからだ…

 確かに金は大事だ。だが、命あってこそすべて…

 神でも悪魔でもいい…奇跡を…あの人のそばでもう一度生きる奇跡を与えてくれ…


 落下…わけのわからぬまま脳内を駆け巡る走馬灯…その最後の最後で彼は思う。


「その願い、叶えよう」

誰かが確かにそう言うのを聞いたその次の瞬間、べシャリとトマトを潰したような音を佐原は聞いた。



……ここは…?

 目が覚めると、ピンクと白のグラデーションの世界。

 コレが天国というヤツか?

 「結局、嘘じゃないのっ!!」

  え゛っ!?

 自分が呟いたはずの言葉は『結局嘘じゃねぇかっ!!』という、男言葉であったはずである…しかも発したはずの声が自分のものではなく、AVGの萌えキャラばりの甲高い女の声…

 自分の手を見ると、白魚のような指に、長めに伸ばし整えられ、ちょっとしたネイルアートを施した爪…そして少し視線をずらすと胸の谷間…

  「な…何よっコレっ!!」

 なんじゃこりゃあ…という叫びも自動変換…

 ふと上を見上げると、スロットのドラムのようなものが宙に浮いている。

 「願いは叶えられたのだよ」

 無人の空間に響く誰かの声…

 やはり俺は死んだのか?いや、あれで死なない方がおかしいんだけど…

 「本来、死んだらすべて終わりだ。だが君は生まれ変わり、あの青年が存在する別の次元に飛ばされたのだ」

 「な…なんで女の体なのよっ…」

 たとえ別の次元でも、カイジがカイジらしくカイジとしているのなら、そしてそのそばで生きることができるのなら、不平不満を言うのは間違い。奇跡が起こったのなら、贅沢は言えまい…でも 大砲の代わりに巨乳…カイジに愛されるのはこちらの体の方だろうが、これでは、カイジにあれやこれやが出来ない…そういうお道具もあるようだが、やはり自分自身の自慢の砲筒でカイジにつながらなければ嘘である。

 佐原は内股でへたりと座り込み、しくしく泣く。

 「しかも、豹柄の露出度の高いこの格好…恥ずかしい上に、多分あの人の好みじゃないのよっ!!あの人、清純派が好きなんだからっ!!」

 思っていることが声に出ると、次々女言葉に自動変換…それがまた、佐原のストレスレベルを上げる。

 「…そう言われても…前のまんま生まれ変わるには、窃盗の罪がある。それに…」

 おそらくこの世界の大いなる存在の声が、佐原の問いに答えるが、最後の方でなにやら口ごもった。

 「なによっ!!言いたいことがあるなら、最後まで言いなさいよっ!!」

 キャンキャン吼えるスピッツそのままに佐原が怒鳴る。本気で怒っているのはわかるが、すべてが可愛らしい仕草になるので、あまり迫力がない。

 「パンツが…」

 「な…なによっ!!」

 「生前履いてたパンツが…豹柄だの黒光りする素材だの、いまどきホストが履くかどうかもわからないようなビキニタイプのきわどいのしかなかったから、そういうのが好きなのかと…」

 「あたしがどんな下着つけていようと、あたしの勝手じゃないっ!!ばかぁっ!!」

 10万と言えば見る人から見れば給料一か月分の大金である。そういう人から奪ってしまったら、どうしたって罪は重かろう…だが、けっこう利益を上げているコンビニの店長の、しかもどう見ても、自宅では奥さんに見つかってしまうから、店に隠しておいたへそくりの金である。それをつい出来心でくすねてしまったことと、まったく個人の趣味の下着の柄でこの扱い…ひどすぎる。確かに罪の部分はあっても、贖罪にしてはバランスが悪すぎる。

 「まぁそんなに悲観しなくとも良い…あのカイジとか言う青年が、君の正体に気づけば、元の姿に戻るようにしておいたから。おとぎ話にありがちな試練だと思うが良かろう」

 じゃぁこの姿は『呪い』じゃないかよっ!!と思う佐原だが、でももしそれを言ってご機嫌を損ねたら、トマトグシャッ…の瞬間に戻され、しかも即死状態にはしてもらえないのかもしれない…と思い、ぎゅっとくちびるを噛んで、声に出すことを堪える。

 「では、撤去の日まで励むように…」

 ナゾの言葉を残して、その声は聞こえなくなった。

 ムカつくことはムカつくが、それでもすべての希望がなくなったわけではない。切り替えの早いことだけがとりえの佐原は、とりあえずがんばることに決めた。



 「どうしろってゆーのよ…」

 佐原は声に出すとストレスになると知りつつも、そうため息をついた。

 確かにこの世界にカイジはいる。確かに彼が彼らしく彼としていることはいるのだが…

 この世界で過ごしてみてわかったことだが、リモコンで操られるように、自分の行動が自分の意思でどうにも出来ないのだ。

 基本的に佐原が見るのはカイジの背中と横顔。間近で見ることがあるとすれば、玉乗り勝負のイベントで、隣でアワアワするときだけである。しかも時には、いけ好かない一条とかいうヤツに「もうっ…一条さんったらぁ」と腕組んでこびこびしなきゃならない…

 でもそれならまだマシというものだ。

 こんなナイスなバディを前にして、カイジがときめいてるのは、あのときのように花束を手にしている遠藤とかいうおっさん…嫉妬の炎は豊か過ぎる胸の内を焦がし、そっちの人だったんなら、こんな姿になる前に手を出しておけばよかったと、心底後悔する佐原…

 「もう、最悪〜っ」

 彼が元の姿に戻れる日は……………果てしなく遠い。























































 つぶやき

 もしかしたらスロカイジが出た当初、どなたかがやってる可能性が高いネタ…(でもバニーちゃんコスチュームが佐原のパンツの柄だと言うのは、多分あたしぐらいか?)
 カイジにも散々ひどい目にあっておりますが、あのバニーちゃんにもガセでかなりひどい目にあっておりまして…でも女の子キャラは殿方がいろいろなさっているので直接いじめるわけにもいかず、こーゆーことに…
  まともに表示されていれば、かなり趣味の悪い背景は、ボーナス確定配色ってことにしといてくださいませ。

 かなり前に同人DLサイトでこのバニーちゃんが陵辱されるCG集のサンプルを見ましたが(あんまり似てなかったけど)佐原の女体化だと思えば多少は萌え、多少は溜飲も下がります(あさましいなぁ、自分)。