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三好前田にハンカチを振られて涙で見送られる… 結局、兵藤和尊の息子、和也にすごろくのマス目の指示通りに『一生鎖につながれて飼われる』を実行されたカイジ…そんな見送りより欲しいのは、天より地獄へと垂らされるはかない蜘蛛の糸のようなものでもかまわないから、とにもかくにも窮余の策なのだが、祈りはただ虚しく、犬耳付きメイド服にスカートの下は振動音…の破廉恥極まりない姿で兵藤家のベンツに押し込まれ、両脇を屈強な黒服にがっちりガード。もはや成す術なし。 いつもならこんな場面の方が頭が切れそうなカイジであるが、今回はダメである。 「ああっ…」 黒服が抵抗するカイジに目隠しをすると同時に、車以外の振動が猛烈に強くなった。言うまでもなく和也の仕業である。 「見えないほうが感じるだろ?カイジさん」 言葉どおり、先端からあふれまくる蜜で、カイジのそこはとろとろ…余談だが何度目かのトイレでの罰ゲームで、カイジの下着は和也のナイフで展開図にされたので、現在スカートの下はノーパンである。 「やめろっばかっ」 もやがかかる思考にも『認めたら負けだ』という意識が残っている…なおも抗おうとするカイジを黒服が押さえ、手錠をかけた。 重い金属の冷たさに、カイジはぞっとする。 「うちに着くまで、退屈しない程度に遊んでやるよ」 いっそ、あの時みたいに眠らせてくれっ… 今と似たような状況で遠藤に連れ去られたときのことを思い出し、カイジは切なくなる。 体は気も狂わんばかりに、もっと刺激を求めるが、心には責め苦でしかない… 兵藤の大邸宅を見ることなく、カイジがその門をくぐる頃、長い夜は白々と明けていた。 はてさて…年寄りは早起きである。 兵藤和尊もその例外ではないらしい… 外のあやしげな集金パーティーでお互い姿を見ることはあっても、基本的に外で遊び歩いている和也が自宅に戻ることはめったになく、また、すれ違いの生活パターンのため、この広い廊下で親子が出くわすことは珍しかった。 そして珍しいといえば、和也の後ろに珍客である。 「おぉ…おぅおぅおぅ…」 老人は分身の術でも使ったかのように、カイジの回りをおおはしゃぎで回る。今にもべろべろ嘗め回しそうな勢いだ。 「おやじ、やめてくれよ。コレは俺のペットだ」 祖父と言ってもいい年齢の父親が、それを聞いて目をランランと輝かせる。 「そうかっ!それはいいっ!!ペットは心を和ませるものだからのぅ…ところで和也。花器を貸してくれんか?」 「はぁ?俺、そんなもん持ってないぜ?…大体あんた、人間国宝の家族から、ただ同然で巻き上げたのがいくらでもあるじゃないか」 兵藤家には年代物の茶道具、花器は対外的に思われているより少ないが、人間国宝の身内を金で絡めとり、借金のかたに巻き上げているので、その手の器には不自由していない。 「何を言う。今このとき、この器でしか映えない花というものがあるんじゃ!!一期一会というではないか」 一応茶室もあるとはいえ、この俗物過ぎる俗物がいきなりそれも朝っぱらからわびさびとは… 若いとはいえ、徹夜で遊んでいた頭はすぐに答えにたどり着けなかったが、そろそろ霞が晴れてきて、ははーん、と和也は一人納得した。 「そういえば、オプションで一輪挿しがあったなぁ…ピンクの」 未だ目隠しをされているカイジは、ペットが自分のことを示しているのはわかっても、その後の話の流れがイマイチよくわからない。ただ、足元でなにかがうずくまる気配がして、自由にならない手で必死でスカートの裾を押さえる。 足元にうずくまったもの…それは老人が『一輪挿し』の色具合を確かめていたところだった。 「そっちはまだ未使用品だ。当然、レンタル料はいただけるんだろうね?お父様」 「金にしっかりしているのはよいが、お前、生まれてから一度も『父の日』とやらをやってくれたことがないじゃないか。一度くらい孝行してくれたところでバチはあたるまい?」 「なに、あんたも貧乏人の浪費イベントに参加したかったのか?」 この親にしてこの子ありというのを、なにやらひしひしと感じるが、あまり仲は良くなさそうである…その部分を突けば、もしかしたら逃げられるのか? 「まぁ今日は機嫌がいいからな。かなり気の早い父の日ってことにしといてやるよ。俺も見てるがね」 「よいよい。この手の生け花は大勢の人に見てもらったほうが楽しい」 この親子、ぴりぴりと刺す空気は険悪そうなのに、どうやら利害が一致したらしく、お互いニターっと笑う。 自分がこれからどんな目にあうのか、まだわかっていないカイジは、自分が逃げる機が離れたことだけは肌で感じて、一つため息をついた。 「ばかもんっ!!ロケーションを考えるがよいっ!!ここは白襦袢に麻縄、手ぬぐいで猿轡だろうっ」 わけのわからぬまま、和也の悪趣味極まりない自室に連れて行かれ、裸に剥かれたかと思えば、すごい手際で和也に革ベルトの拘束具にポールギャグをかまされ、その姿で茶室の狭い入り口をくぐらされれば、ジジイの怒鳴り声…俺、ホントにこんなところに一生飼われるのか?嫌だ絶対!!と思うカイジである。 「お望みのものはレンタルしてやるんだから、ちったぁ妥協しろよ」 「いかんっ!!おい、誰か、白襦袢に麻縄と手ぬぐいを持って来いっ!!今すぐじゃ」 瞬く間に、注文の品が届く。 これもまた親子で、老人はすごい手際で最初の拘束具を外したかと思うと、いきなり首から縄をかけ、全身にまきつけてゆく。 隙を見て振り払おう、逃げようと思うカイジだが、首に縄をかけられると、さすがに締まるのがおそろしく、また、ぶつぶつ言いつつも、和也がカイジの動きを束縛しているため、結局成されるがままである… 結局、でたらめに長襦袢をひっかけられて、仕上がってみると海老反り状態で縛り上げられ、その無理のある姿勢で仰向けにされる。 襦袢は意図的にカイジの中心が露出するようはだけられ、ポーズもまた、その部分を突き出すような形で拘束されている…通常ではありえないポーズに筋肉組織があげる悲鳴と、羞恥、屈辱で、カイジは全身をふるわせた。 「で?満足か?おやじ」 不平たらたらだった割に、この淫らな花器のできばえに、和也本人は満足したらしい。 「ふむ。花器だけ愛でるのも風情はあるが…花器にはやはり花を生けなくてはな」 「父の日の代わりってことは、やっぱ黄色いバラか?」 「いくらトゲをとっても、さすがに初めてでそれは壊れるじゃろう…形あるもの、いつかは…とはいえ、これは長く使いたい器だからのう」 そして届いた花は見事な白い百合が一輪。 「白に白は地味だろ、やっぱ」 「いや、ペットとはいえ、一生を誓ったのなら花嫁。花嫁にはやはり純白っ」 花を生ける生けないの話しは理解できないものの、とりあえず自分は一生を誓った憶えはまったくないので、カイジはうんうん唸るが、いっそ潔いほど二人は無視。 「あー、花嫁さんね。…じゃぁ、サムシングブルーってのもいるよなぁ…」 にやりと和也、ポケットに手を伸ばす…が、父に止められた。 「それは後の楽しみ。今は花を飾ってやらねばのう」 和尊はカイジの桃色のそれをそっと握りこむ。軽く扱くと、カイジの意思とは切り離されて、そこは芯を持った。 百合の茎の切り口を舐めあげ、尖ったそれをカイジの先端へ… カイジは猿轡をされた口で、声にならない悲鳴をあげた。 珊瑚色の一輪挿しが純白の百合で彩られる…カイジの顔色は器の色とは対照的に青ざめていた。 「…へぇ〜なかなかわびさびもいいもんだね」 「とりあえず、花も生けたことだし、一服するかの」 「まさか、正式な段取りでお茶点てるのか?」 かったるそうに、和也は眉をひそめるが、ああでも、今日は父の日だもんね…とニヤリ。 俗物成金でも、衣装や道具と言う名の金を見せびらかす場として、茶道をたしなむ者は多い。今時の若造で、忍耐力に欠けるとはいえ、そういう連中から金を巻き上げるために、一通りのことはたしなんでいる和也である。準備やら作法の手順やらなんやらで、時間がかかるのは重々承知でこの申し出に乗る理由はただ一つ… 「それにしても和也、ペットを可愛がるのはほどほどにしなくてはならんぞ?」 「俺の愛玩動物をどんな風に可愛がろうとかまわないだろうが」 「いや、お前の場合、可愛がりすぎて『キュ』っとしちゃうだろう…」 「ははは…昔のことじゃん」 「3歳のころ、ハムスターを『キュ』としてしまったのはまだわからんでもないが、タマを電子レンジでチンしたのは…中学のころじゃなかったかの?」 「やだなぁ5年だよ?小学の。こどもの可愛い知的好奇心じゃん」 「……お前がそんなだから、神威の爺さんに飼ったばかりの順一郎を里子に出すことに…うううっ…」 和尊氏、人間には極悪非道だが、人間以外の生物には顔に似合わず優しいらしい。 ともかく、一服中の親子の語らいを傍らで聞いていたカイジ、そんなことを聞く前に、いっそ気絶してしまいたかった。ハラハラドキドキルーレットがなくても、和也のペットでいる限り、生命の危険とつねに隣り合わせ… 「ところでオヤジ、花瓶の方がしおれてきたみたいなんだけど?」 放置プレイのあとのお楽しみである。 和尊は下品な音を立てて、カイジの竿のあたりを吸う。そして和也は 「俺の花嫁さんなんだから、こっちは俺が入れてもいいだろう?」 なぞと父に確認しながら、色だけはコバルトブルーが美しい、いぼいぼでごつごつで電池で動くそれをカイジの入り口に押し当てる。 花嫁衣裳のどこかに青いものを忍ばせると、その花嫁は幸せになれる…と、西洋では言われているようだが、カイジの場合にはまるであてはまらなかった。 |